ヒートで苦しむ中、ベッドで膝に縋る俺を見るAiはいつも穏やかに微笑んでいた。
Aiは人間と違って、俺のフェロモンに当てられて発情する事はなく、ただこの現象を受け止めて、俺や、俺の環境を整えるために動いてくれている。
きっと、このまま人工知能やそれらが操れるボディデバイスが安価になって増えていけば、彼らをパートナーとするΩが増えていくだろう。
いやまあ、Aiがイグニスで、人間と遜色ない思考が出来るからここまでしてくれるのだが。しかしそれに至らなくても、一緒に発情してやる事がセックスだけで、その他の事が一切出来ないということにはならない。
それに、俺だって子どもが欲しい訳ではない。ヒートに持っていかれる時間も体力も惜しい。番もいなくていいのに。しかし俺の身体は世間の人間たちが鼻で笑う程健康らしく、規則正しくヒートが起こる。
うざったい。必要ないのに。番も子も性欲も。───そう思っているのに、ヒートが起こるとそれらが欲しくて仕方が無くなる。これがお前の、人間の真実の欲求であって、普段は取り繕っているだけなのだと、身体が俺の思考に指を差して笑っているかのようだ。
見上げたAiは穏やかに微笑んでいる。俺がいるのだから安心してくれと、凪のように静かにそこにいる。
───ああ、もう、お前も発情してしまえばいいのに。俺の指を吸い上げるばかりの孔に、お前が付けた太くて硬いものを挿れて擦り上げて欲しい。お前の子なら、孕んでもいい。お前はそれの元になるものを持ってないけれど、それでもいい。それでもいいから───
敢えて喘ぎ声を上げていなければ、そう言ってしまいそうだ。
だが、言わない。発情しないことが、Aiが己に見出した価値であり矜持だからだ。
頼めば応えてくれる。一度そう溢した事があるが、束の間「やはり一緒に発情する相手がいいのか」と言いたげに、傷ついたように眉尻を下げたAiを見てから、もう二度と求めないと誓った。
ああ、でも寂しい。俺だけがこうやって悶えて、Aiはそんな俺に少しも反応しないことが。
だからせめて───と、Aiの後頭部に手を置き、顔が近づくようにする。
Aiは分かっている、とばかりに口の端に笑みを乗せて、唇を開いた。
オメガバースパロのAi遊 - 5/6
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